FAQ5 雑誌・学会での発表後の出願(特許法30条適用出願)について

5.雑誌・学会での発表後の出願(特許法30条適用出願)について

Q5-1: 学会や論文発表と特許出願の関係について詳しく教えてください
Q5-2: 卒業論文、修士論文の発表会や学内で行われる研究集会での発表はどのような扱いになるのでしょうか。
Q5-3: 取材を受けて新聞に掲載された記事や、大学からニュースリリースを行った場合は特許法30条にいう刊行物にあたりますか?
Q5-4: 学会前に事前に配布される予稿には出願予定の発明の部分を触れずに書いて、学会発表当日までに出願して学会で発表を行いました。予稿は発表前の公知とはなりませんよね?
Q5-5: 発明である化合物の構造は出さず、化合物Aとしてその物質の持つ物性や特徴を詳しく発表しました。構造がわからなければ公知にはなりませんよね?
Q5-6: 科研費や各種グラントの申請の際に提出する資料は秘密は保たれていると考えてよいのでしょうか?
Q5-7: 特許出願後の学会・論文発表で注意すべき点はありますか?

A-1:
特許出願を行うためには発明の新規性ということが重要となります。特許の出願以前にその内容の一部または全部について不用意に公表(学会発表、論文投稿、ホームページ公開、守秘義務契約を行わない不特定の人間が出入りする場での発表など)を行ってしまいますと、自らの発表のために自分の発明の新規性が失われ、特許を受けることができなくなるという事態が生じます。しかしながら、研究者にとっては可能な限り早く自分の研究成果を発表し、プライオリティを主張することは当然の心理であり、このような発表も全て公知として新規性がないとすると、産業の発達上においても妥当ではなく、発明者にとっても酷と考えられます。

そのため、日本の特許法においては第30条で新規性喪失の例外規定を定め、新規性を失った発明でも一定の条件と手続の下では新規性は失われなかったものと扱うと定めています。学会発表後6ヶ月以内に特許出願をすればOKと一般に理解されているのは、この第30条の規定に基づいております。

新規性喪失の例外規定を適用するためには、以下の条件が必要となります。

a. 発表の時点で特許を受ける権利を有する者自身が発表すること(発明者が発表する場合、特許を受ける権利を出願人に譲渡する前であること)

b.公表から6ヶ月以内に特許出願を行うこと(学会以前に予稿集が発行された場合、その予稿集の奥付に記載される発行日が公表の日付となります)

c. 特許出願と同時に、新規性喪失例外規定を適用する旨を記した書面を提出し、かつ、特許出願後30日以内に、発明の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出すること(複数回発表したら、それぞれについて例外規定を受けるための手続が必要となります)

しかしながら、この新規性喪失の例外規定適用に関しては以下のようなことに注意する必要があります。

Ⅰ.この例外措置は日本国内においてのみ有効であり、同様の規定のない諸外国においても特許を取りたいと希望した場合、一部の国を除いて「新規性を失った発明」として特許を受けられなくなります。

Ⅱ.発明者の学会発表のアイディアに基づいて他の研究者が独自に改良発明をし、先に出願または発表を行ってしまうと本人の特許出願が認められなくなる可能性があります。

こうした事態を避けるためにも、できるだけ学会発表前に特許出願を済ませておくことをお勧めします。また、学会発表が近い段階や既に発表してしまった発明について届出を行う場合はその旨を届出時に申し出てください。

特許庁ホームページ内に特許法第30条適用に関する手続が掲載されていますのでご参照下さい。

 

A5-2:
学内の発表や研究集会についても、不特定の参加者が聞くことができ、秘密保持の誓約もないようであれば、学会発表と同じく公表として扱われます。このため、特許出願前に卒業論文・修士論文発表会で研究発表を行う際には、次の2つの方法のいずれかをとっていただくようお願いいたします。

(1)発表会を「公表」の形にしない
学士/修士論文審査会などでは、研究科や専攻の協力の下に「公表」とならない開催も可能であると考えられます。発明が「公知」とならない取扱いをするには、以下の点に留意願います。

・「公聴会」等の呼称を避け、当該発表会の開催案内の記載においても、参加対象者の範囲を明示する。(例:○○研究科○○課程学生、教員、研究生)
・審査会の参加者に発表内容が秘密であることを伝え、全員が秘密保持の誓約書に署名をする。
・関係資料の公開を避ける。

卒業論文等、当該関係資料等も図書館等で公開するまでの間、一般の書籍・文書等と別に管理して、閲覧者からその都度秘密保持の誓約書に署名をもらうなら、「公知」の扱いとはならず、その間は通常の特許出願が可能です。

もしも、論文集、関係資料等の図書館等での一般公開を行うと、その時点で「公知」の扱いとなりますが、この一般公開の日をはっきりと記録しておくことが必要で、そうしておかないと、当該関係資料等に掲載の研究発表会等の開催の日に一般公開されたものとみなされ、「公知」の日が遡る扱いを受けることとなりますので、注意が必要です。

(2)発表後に特許法30条を適用した出願を行う。
この場合、発明届出時に必ず発表の事実、最先の日付をお伝え下さい。

 

A5-3:
平成23年の特許法改正(平成24年4月1日施行)により、従来適用対象とされていなかった、集会・セミナー等(特許庁長官の指定のない学会等)で公開された発明、刊行物でないテレビ・ラジオ等で公開された発明等も新たに特許法30条の適用対象になりました。

 

A5-4:
出願の内容が発表の予稿に記載されていない場合、予稿の公開は発明の公知とはなりません。

 

A5-5:
化合物の構造や名称を出さずにその特性のみを発表した場合には、化合物と特性との関連付けがされないので発明が公知に至ったことにはならないと考えられます。

 

A5-6:
申請書は「公開を目的とするもの」ではなく、提出先でも公表のために使用されるものではないので、「秘密状態」が保たれていると思われます。ただし、研究が採択された場合、その要旨の部分がホームページ等で公開される可能性がありますので、注意が必要です。

 

A5-7:
特許出願後、1年以内にデータや改良発明を追加して国内優先権主張出願や外国出願を行うことができますが、元の基礎出願を行った後に行った学会・論文発表の内容が、その後追加する改良発明に係っている場合、追加した発明部分が当該発表によって新規性・進歩性を否定される根拠になる可能性がありますので注意が必要です。
原出願を行う際、今後追加する可能性があるかどうかや、発表との兼ね合いについて担当者にご相談下さい。